少し前に読み終わっていたんだけど、感想書いてなかったので。
『アンダー・ユア・ベッド』 大石圭
一応、角川ホラー文庫なので、ホラーの範疇に含まれるのかな?
でも読んでいくと、ちょっとした純文学か、あるいは恋愛小説?
みたいな感じです。
主人公は、皆に存在を忘れられそうなくらい存在感の無い男性。
彼が唯一の楽しみにしているのは、大学時代に自分の苗字を
呼んでくれた女性の観察。
タイトルから分かる通り(?)彼はストーカーなのです。
彼女は既に結婚しているんだけど、そんな彼女の家に
忍び込んでは、ソファやベッドの下で過ごしたり、
盗聴器を仕掛けて夫婦の会話を盗み聞きしたり・・・という毎日。
でもね、不思議なんですよ。
読み進むにしたがって、何だか主人公の彼を応援したくなるような感覚に
陥ってしまうんです。
異常に見えるけど、異常じゃないと言うか、純粋というのか・・・。
彼女を自分のものにしたいワケじゃないんです。
ただもう一度だけ、向かい合ってコーヒーを飲みたい・・・それだけの願い。
ラストに向かうに従って、ジェットコースターのように展開して行き、
もうページをめくる手が止まらない状態に。
ラストは後味の良い余韻を残してくれて、ホラーとは私は思っていない。
でも確かに暴力的な描写が多々出てくるので、そういう点ではホラーなのか?
とにかく、主人公が誰にも愛されず、そればかりか、誰からも憎まれず、
居る事すら覚えて貰えていなくて、何の期待もなくて、
今、彼が死んでも誰も気付かない・・・という状況が、大変閉塞的で、
息が詰まるほど悲しい。
そんな彼の心中が淡々と語られてるんだけど、それなのに彼が
どれだけ人から必要とされたかったかが、ヒシヒシと伝わって来るんだよね。
文章力がハンパないぜ!と思った次第。
初めてこの作者の本を読んだと思っていたら、「輪廻」も「呪怨」も
彼が小説化してたんですね。「呪怨」は読んでないけど、
「輪廻」は小説読んでから映画見たけど、どっちも凄い面白かった。
もう少しこの作者の本を読んでみるのも良いかも知れない。
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